吉野の森からの手紙

最近、健康問題等で無垢の木が見直されてきています。しかし、その大本である林業はどのような現状なのでしょうか?
ご存知の通り、日本は世界有数の森林国です。杉・桧を中心に国内の年間住宅建築の構造材をまかなうくらいどんどん成長しています。それなのに、実際はヨーロッパや北米・ロシアといった世界中から木材や建材を輸入し、国産材の需要量は20%を切るまでになっています。また、木材の価格も40年前と同水準まで落ち込む一方、職人の数がどんどん減り、植林から手入れ、間伐、伐採そしてまた植林と言うサイクルが維持できなくなっています。雑草や枝が荒れ放題の山や、伐採してそのままの禿山が至る所にできる結果、山が雨水を保水する力を無くし、洪水や、逆に地下水が枯渇し川の水が極端に減るといった状態になります。また、最近話題のCO2問題でも、二酸化炭素を吸い酸素を出すのは、健全に成長している木で、枯れた木や過熟した木は逆に二酸化炭素を出す量のほうが多いそうです。
皆さんが国産材を少しでも使っていただくことによって、子どもたちの世代に水や空気の源である森を残すことにもつながるのです。私たちも安価で高品質の木材を提供し皆様のご期待に添えられるよう、日々努力いたします。
協同組合吉野の森と住まいのネットワーク・代表理事 泉谷 繁樹
皆さんこんにちは。奈良県は最近めっきり寒くなってきました。
さて、昨年秋に開催し好評を博しました吉野の森ツアー。今年も定期的に開催していくつもりですが、まず紙面をお借りして、吉野の林業の現状や木の家づくりに関してレポートさせていただきます。
私の父は林業家の次男として生まれ、子供のときから山で遊び15歳から山で働いていました。28歳のとき製材業泉谷木材商店を創業しました。その長男である私は大阪の皆さんとあまり違わない環境で育ち、東京で某大手ハウスメーカーS林業の商社部門で木材の輸入と販売に6年間従事していました。
カナダ・アラスカ・アメリカ・NZの森林や木材業も見聞し地元に戻って来ました。トコロテンのように同じものを大量にオートメーションで製材するカナダやアメリカの製材業と違い1本1本丁寧に製材する工場。その挽いている原木も恐らく世界一手間をかけて育った吉野杉・吉野桧。時間の感覚が大きく変わったのを覚えています。しかし海外の工場では感じなかった木に対する愛情がそこにはありました。時間がゆっくりと流れる吉野の林業。現代に生きる私たちが忘れてしまった何かがあるかもしれません。500年前室町時代から営々と続く、吉野林業の流れについて今日は私と一緒に学びましょう!
題して『吉野杉・吉野桧の一生』
山の春、枯れた枝や葉を棒で取り除き土を探り当てる地ごしらえ。そこに3年生の苗を植林します。吉野では緻密な年輪と芯が真中にある良い木をつくるために1ha当り8,000本と一般の地域の3倍にあたる程多くの苗を植えます。そこから80年生に育つ木は約700本、100年生以上になるのはわずか400本と20倍の競争率です!
植えた年から数年間は夏の熱い太陽の下での下草刈りが欠かせません。勢いのいい草や潅木に背を追い越されると、幼い木が育たなくなるのです。3年目までは6月下旬と8月下旬の2回、4〜6年は8月下旬に行います。谷から峰へ1人2m幅で刈り進み、特に苗木の根本は細いつる草まで丹念に刈り取ります。それはまるで子どもを慈しむように。
その後育ちの悪い木の除伐、冬場の雪起こし、枝打ち、間伐と山の手入れは休むことがありません。その中の枝打ちとは木が若いうちに枝をきれいに落としてやることで何十年もかけて傷跡が覆われ、節のない木ができるのです。ただ手荒に枝を落としてもだめで、まず枝の根元を手斧で下から一打ちして皮が向けないように気を配って、枝の根元を上から打つようにします。この丁寧な作業を桧であれば20年以降10年に1回の割合で3回も繰り返します。間伐は木の生長を助けるために行いますが、紙面が尽きてきました。ここから先は次号にてお伝えします。次号(間伐・伐採・原木市場から製材工場まで)をお楽しみに、、。

林業はゆるやかな時間の中で多くの手間をかけて成り立っています。前編で紹介した植林・下刈り・枝打ち・除伐をへて大きくなってきた山では、混み過ぎた状態を緩和し適度に太陽の光が入るように間伐を行います。吉野では一度にたくさん間引きしないで少しずつ何回も行います。ただ、現在では若くて細い間伐材の需要が少なく、山側としては頭の痛い問題になっています。
吉野では80年・100年以上たってから主伐しますが、伐採は乾燥しやすく虫がつかないよう、木に水分の少ない秋から冬にかけて多く行われます。山での乾燥のことも考えて斜面の上方に倒しますが、木と木のわずかな空間を長年の感でよく見定めて、まず切り倒す方向にチェーンソーで受け口を作り、反対側に追い口をチェーンソーで作りくさびを打ち込んでいきます。静寂の後、スローモーションのように大径木が倒れ、ズドーンという大きな音が鳴り響きます。
そうやって伐採された木を山で乾燥させてから、ヘリコプターで吊って土場に集めます。そこでトラックに積み込んで原木市場に。競り市で落とされ製材所にたどり着き、丸い木から、板材から角材・割り箸の原料等余すところ無く切り分け・住宅用材として加工され、最終的に大工や住宅メーカーの手元に行き、新たな命を吹き込まれるのです。
次回は住宅の中で木がどのような役割を果たしているか、説明したいと思います。
(協同組合吉野の森と住まいのネットワーク 代表理事 泉谷 繁樹)

木をふんだんに使った家っていいなあと思っている方は多いと思います。でも一体何が良いのでしょう?確かに吉野杉や吉野檜はとってもいい香りがします。割り箸や酒樽・寿司箱といった食べるものに使うくらいですから。同じ無垢の木でもマンションや建て売りの住宅で良く使われる米栂などはツンとした臭いが鼻につきます。いずれにせよ、木は製材され、刻まれて住宅の中にあっても呼吸してます。香りがするのもそのせいですし、日本固有の湿気を多いときは吸ったり、少ないときは放散したり調整する役割も果たしています。
また、冬場コンクリートや鉄を触るととても冷たいですが、杉のフローリングだと心地好い暖かさがあります。生まれたばかりのマウスを使った実験でも、生存率が木の箱なら90%に対して金属箱では50%、コンクリートの箱にいたっては5%と明らかな差が出ています。こういった香りや吸放湿性・断熱効果というもの、木の良さを生かした家づくりをしないと生きてきません。柱をクロスで覆ったりしないで、常に呼吸できるようにしてあげるとか、体が触れるところに無垢の木を使うとかすれば、木の良さを引き出せるのではないでしょうか?そうすることによって、木が生きていることが実感できると思います。次回は環境と木材についてお話したいと思います。
協同組合・吉野の森と住まいのネットワーク 代表理事・泉谷 繁樹